篝火が灯る能舞台で「狂言」の魅力にふれる!

フォレリウムと伝統芸能「狂言」のコラボレーション。
造園家が手がけた「そらのもり能楽堂」に「YOKA」の焚火台で篝火を灯し、
大蔵教義(能楽師 狂言方 大蔵流)師による「夜遊狂言やゆうきょうげん」を催します。
演目は『附子ぶす』。太郎冠者と次郎冠者の凸凹コンビが抱腹絶倒のドタバタ劇を繰り広げます。
みずからが招いた絶体絶命のピンチを、どうやってやって切り抜けるのか!?
今も昔も変らない、おおらかな「笑い」の世界を、どうぞご堪能ください。

〜「附子」あらすじ〜

家の主人から留守番を言いつかった太郎冠者※1と次郎冠者。「あの桶には附子ぶす※2という猛毒が入っているから、けっして近づくな」と念を押されますが、どうしても気になって仕方がありません。「流れてくる空気を浴びただけでも死んでしまう」と聞かされていた二人は、扇であおぎながら恐るおそる桶に近づき、とうとう中を覗いてしまいます。

すると、そこにはなにやら黒いものが。太郎冠者は食べてみると言いはじめ、必死に止める次郎冠者をふりはらって附子を舐めてしまいます。てっきり死んでしまうかと思いきや、あまりの美味しさにひっくり返る太郎冠者。

そう、桶に入っていたのは附子ではなく「砂糖」だったのです。留守中に貴重な砂糖を食べられてしまわないよう、主人は二人に嘘をついて出かけたのでした。またたく間に砂糖を食べつくしてしまった二人。さあ困ったことになりました。主人にお手討ちにされてしまう…!

そこで一計を案じた太郎冠者。なんと、主人が大切にしている掛け軸や茶碗をめちゃくちゃに壊してしまいます。やがて主人が帰宅すると、なぜか大泣きしている太郎冠者と次郎冠者の姿が。驚いて何が起きたのか問う主人に対して、太郎冠者は滔々と事情を説明していきます。

教科書でもおなじみの本作。小心者のくせに、いざとなるとずる賢く大胆にもなれる。そんな太郎冠者の姿は、あたかも庶民のしたたかさを体現しているかのようです。とっさの頓智と無理矢理すぎる言い訳に、唖然とするやら吹き出すやら。狂言の「人間喜劇」としての側面を色濃く感じられる演目です。 ※1【太郎冠者】たろうかじゃ。主人に仕える召使い。狂言の代表的な登場人物。狂言の演目の中でも太郎冠者をシテ(主役)とした「太郎冠者物」はもっとも数が多い。

※2【附子】ぶす。本来はトリカブトの塊根のこと。アルカロイドを含む劇薬。誤って口に含むと神経系の機能が麻痺し、呼吸不全に至って死亡することもある。

大藏教義(おおくら・のりよし) 唱和56(1981)年生まれ。二世大藏吉次郎の長男。祖父である第二十四世宗家・故大藏彌右衛門および父に師事。大蔵流吉次郎狂言会同人、公益社団法人能楽協会東京支部会員。四歳で『業平餅』の稚児役で初舞台を踏み、以来、各能楽堂の舞台にて狂言方を務めながら全国各地での学校公演、「狂言LABO」などの自主企画を通じて狂言の普及に努めている。能楽四役で構成されるユニット「能楽【談】ディズム」のメンバーとしても活動中。